前回の①の記事に引き続き、この記事ではGroup1の活動を記載します

Group1の家庭訪問調査では、大学4年生のNhaさんのお宅に訪問し、お話を伺いました。
Nhaさんはクリエイティブ系の私立大学に所属しており、マーケティング分野などを専攻されていたようです。卒業後は、在学中にインターンをしていた企業でのマルチメディアマーケティング関連の仕事と、韓国系の、AIを用いてDXを推進する企業の仕事の二つを掛け持ちする予定です。
家族・出身背景
・出身地:中部都市ダナン。
・家族構成:父・母・妹(12歳)。
・父の職業:自営業(工業機械販売)+他企業の外部監査的な仕事。
・母の職業:銀行の会計職。
・現在:ホーチミンの都市部で一人暮らし。
収入・経済観
収入:
・韓国系AI企業:500万ドン/月(初任給)
・マルチメディアマーケティング:600万ドン/月(インターン試用期間)
・全体で1000万ドン(日本円で6万円ほど)
友人との比較:
Grab(ベトナムで主に使われている配車サービス)勤務の新卒1年目で500万ドン程度。周囲の学生も500〜600万ドンが一般的。
生活環境:
一人暮らし用に親の援助で都市部のマンション物件を購入済み(15万ドル=約2250万円)
ファッション
・普段着:ユニクロ・無印・現地ブランドなど。上下それぞれ30万ドン程度。
・特別着用:SHEIN(1着30〜40万ドン)、ユニクロの遊び着、ドレス(日本円で3,700〜4,000円程度)。
・スキンケア:ハト麦化粧水(日本ブランド)、韓国コスメ多数。
・メイク:日常はナチュラル・薄化粧。韓国文化の影響大。遊びや時間があるときはフルメイク。アイシャドウは不慣れで普段は使わない。
・美意識:気候的に白い肌を維持するのが難しく、色白には強いあこがれを持っている
文化的嗜好・他国イメージ
韓国:
・若者人気が非常に高くドラマ・食文化・化粧品は日常に溶け込んでいる。
・ネガティブ印象は少ないが、観光に訪れた韓国人が「態度が大きい」などの小さな不満はある。
・韓国のスナックやB級グルメ屋台も多い(多くはベトナム人経営)。
日本:
・アニメは「クレヨンしんちゃん」や「ちびまる子ちゃん」など、家族愛がテーマの作品や家庭内の描写が多い作品はベトナム全体で人気がある。
・Nhaさんは加えて、「カードキャプターさくら」も視聴していた
・最新アニメ(「スパイファミリー」「チェンソーマン」など)は認知しておらず、アニメに熱心な友人は見ているかもしれないが、Nhaさん自身は積極的に視聴はしていない。
・スキンケア製品(セザンヌ、ハト麦など)や和食(寿司、うなぎ、ラーメン)に親近感。
・日本文化全般に「安心感・品質感」などの印象を持つ。
中国:
・経済面では影響力大だが、個人的好感度は低い。
・テレビ番組など放送されているものもあるが、視聴せず。
アメリカ:
・Netflix作品を視聴。環境・社会問題系コンテンツに触れる。
・留学先やキャリアアップするための目標地として人気だが、ビザの関係上訪れることが難しいのが残念。
タイ:
・ベトナム人が初めて海外旅行する先として人気。
・食文化が親しみやすく、発展したバンコクの都市部やビーチリゾートが魅力
趣味・余暇
・スポーツ:ピックルボール(ベトナムで流行中)
・映画:休みの時間を利用して頻繁に見る
・食事:ベトナム料理、和食、韓国料理。頻繁に外食するので高級店というよりは大衆料理屋や居酒屋がメイン。
恋愛
交際状況:ダナンにいる同級生(高校時代からの同級生。高校では関わりが薄かったが大学以降交際)。彼氏もホーチミン在住。
彼氏の進路:他大学で航空工学専攻。来年卒業予定、航空業界志望。
デート頻度:週4〜5回。外食・スポーツ・映画が中心。
費用負担:「今回は自分、次回は相手」と柔軟にシェア。割り勘という文化がなく交互。
将来像:結婚願望はあるが「まだ若く、早すぎるのではないか」との認識。安定収入を重視。目標はダブルインカムで月5,000万ドン程度。
社会・政治意識
・ベトナムの良い点:食の多様性(穀物類・海産物)、自然環境の豊かさ(高原・内陸資源)。
・悪い点:行政手続きの遅さ。デジタル化の遅れを強く感じている
・政治への態度:深い知識はないが「若い人材の登用や改革を見たい」という期待感あり。
SNS・デジタル行動
利用アプリ:
・Zalo(ベトナム版LINE)
・TikTok(発信:メイク動画・犬動画、情報収集:他人の好みやトレンド確認)
・Instagram(友人とのつながり、写真投稿は自前のデジカメ使用)
・Facebook(仕事用で限定的使用)
利用傾向:
・若者の中でTikTok発信は一般的で、友人もほぼ全員利用。
・SNSは「承認欲求」より「トレンド把握・市場調査的用途」が強い。
Nhaさんは都市の開発地域のマンションで一人暮らしをできるくらい経済的には余裕を持っていました。ただ、その生活に満足することはなく5~10年の間に現在の収入を2倍にすることを目指し、将来的には、培ったAIに関するノウハウを用いて起業したいそうです。
1・2日目を通して、ホーチミンの人たちに対して「1日を全力で楽しく生きる」といった自分の感情に沿った暮らし・生き方のイメージが強かったのですが、Nhaさんはそれに反して、仕事や自分の経済状況に対して明確なビジョンを持って計画的な思考を持っているように感じました。
また、政治に関して、自分では「深い知識はない」と言っていたものの、現在の課題を認識し、自分の意見・要望を持っており、インタビューを行う中でもそれらがすらすらと出てきて社会の一員としての意識が強いように感じました。
施設訪問調査では、ショッピングモールなど若者が買い物をする商業施設を訪れて回りました。
Vincom Center(ヴィンコムセンター)
・Watsons、マツモトキヨシ

ショッピングモールの中で2つのドラッグストアが隣接していました。
「競合してしまうのでは?」と思うかもしれませんが、売っている商品のジャンルが異なっており、Watsonsは韓国系の化粧品が多め、マツモトキヨシは薬や衛生用品など日用品が主な商品でした。
この施設とは別ですが、カフェだけが入っているビルがあったりなど、ホーチミンでは同じジャンルの店を一か所に集め、「とりあえずここに行っとけば目的のものは手に入るだろう」というような販売形式を行っている施設が多いように感じました。
・PNC Book Store



PARKSON
PARKSONは日本の販売店のみが入っている商業施設です
・ユニクロ

・無印良品



・コーナン


↑「ねっこ」と、どこかで聞いたことのある日本語と、裏面の「まぐのゼリーよせ」というおかしな日本語
日本の商品が多数販売されている中で日本の商品を装った怪しい商品も販売されていました。
調査を行う中で、日本製品がかなり高級な位置づけにあることに驚きました。服などの販売相場は日本の1.3~1.5倍ほどで、ベトナム人の年収が日本人の20~50%ほどなのを考えると確かに購入は難しいです。Vincom CenterにはSony Storeなどの日本の販売店がありましたが、客はかなり少なかったです。同行してくださった方によると、日本製品は信頼性があるし安心だが、使用するにあたってオーバースペックであり、それよりかは手ごろな書か腕購入しやすい韓国製品や韓国製品を装った中国製品を購入するそうです。
また、本屋ではバッチやキーホルダーなどはほとんど手に取られておらず、実際にこれらを身に着けている人もほとんど見られませんでした。高所得層が集まりやすい日本の販売店が集まるPARKSONでもお菓子やおもちゃを購入する客はほとんどおらず、服やコットン、文房具など日用品をたくさんかごに詰めてレジに向かう客の姿が多く見られました。このことから服や化粧品など直接身に着けるものを除いて嗜好品を持っていること、身に着けていることにあまり価値を感じていないように見えました。
最後に
今回の調査および直前二日間の調査内容も踏まえると、ベトナムの若者は、他世代と比べて技術面やトレンド感度で一線を画す存在でありつつ、同じ若者層の内部でも価値観の差が大きいと感じました。今回は、二人の若者に調査を行いましたが、二人の意見は、社会への関心(自分の意見の表明や社会課題への意識)、消費行動(購買への積極性)、上昇志向(将来の明確なビジョンや具体的な計画の有無)など、多くの点で異なっていました。
また、彼らユーザーに対してベトナムに販売拠点を持つ日本企業が、現地の文化に合わせた商品開発や、従来のブランドイメージの大幅な転換に取り組んでいる様子が、店頭の商品や購買者の姿からうかがえ、海外の情勢や文化を知ることの重要性を学びました。
これらを踏まえて、海外経験がなくグローバルな視点も十分ではなかった私ですが、今後は「国外の視点」を常に併置し、積極的に調査を行い、事象を捉え、思考していきたいと今回の調査を通じて強く感じました。
青くん